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ウィーン売買条約における根本的違約の判断

5分で分かる判例~

 

15回 ウィーン売買条約における根本的違約の判断

 

「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(以下「ウィーン売買条約」という)における根本的違約(日本語では「重大な契約違反」と呼ばれる)に該当するか否かをいかに判断するか。

このことについて、今回紹介する最高人民法院の二審判決は、次のような判断基準を示した。すなわち、売主が引き渡した物品に欠陥はあるが、買主に不合理な負担をかけない限り、物品が使用できまたは転売でき、さらに多少値引きされた場合には、品質が契約に合致しないことは、ウィーン売買条約における根本的違約に該当すると見なすべきではない。

 

【事実関係】

 2008411日、シンガポールA社はドイツB社と売買契約を締結した。この契約によると、A社はB社から燃料グレードコークス25,000トンを購入し、かかるコークスの典型的なHGI値は3646とする。コークスの船積港はカリフォニヤ・ピッツバーグで、陸揚港は中国の港である。なお、この契約は当時米国ニューヨーク州における有効な法律に基づいて締結・管轄・解釈される。200888日、双方の認可を得た検査人が船積港で発行した検査証書には、本件コークスのHGI値が32と明記された。200898日、本件コークスは南京港に到着した。2008925日、A社はB社に代金を全額支払った。20081110日、中国検査認証グループ江蘇有限会社が発行した検査証書には、本件コークスのHGI値が32と記載された。その他、200810月から中国市場においてコークスの価格下落が続いた。

 双方当事者は本件コークスのHGI値について数回交渉した。A社はB社に対し、本件コークスのHGI値が契約の定めと乖離したことを指摘して善処を求めたが、双方は合意に達しなかった。20091126日、A社は本件コークスを中国のC社に売却した(販売価格は、200810月の市場価格より低いが、同年11月及び12月の市場価格より少々高い)。

 A社は、本件コークスのHGIがはるかに契約の規定からずれているため、根本的違約に該当すると主張し、双方が締結した売買契約の解除を訴え、かつ、B社に代金の返還と損失の賠償も要求した。

江蘇省高級人民法院は審理のうえ、次の通り一審判決を下した。まず、双方当事者は契約において米国ニューヨーク州当時の有効な法律に基づいて締結・管轄・解釈すると定めたが、訴訟においては双方当事者が各自の権利義務を確定する根拠としてウィーン売買条約を選択し、かつ、シンガポールもドイツもウィーン売買条約の締約国であるため、本件契約はウィーン売買条約のかかる規定を適用すべきである。次に、HGI値は燃料粉砕設備の機種を決める依拠であり、数値が低くて粉砕し難いコークスの場合は、設備が変更されないと使用できない。つまり、HGI値が異なるコークスは、粉砕設備に対する要求も異なる。HGI値が32のコークスは必ず粉砕設備に対して特殊な要求がある。これは、このようなコークスの市場ニューズが非常に限られていることを意味する。そこで、B社は、HGI値が32のコークスをA社に交付したことにより、必ずA社の再販に極めて大きな困難をもたらす。これは、実際に、契約締結時A社の期待利益を喪失させたと等しい。B社はコークス貿易に従事する専門会社として、自らの違約行為がA社に損失をもたらすことを知らないわけがない。したがって、B社の行為は根本的違約であり、A社の損失を賠償すべきである。

 B社は一審判決に不服し、上訴を提起した。

 

【判決】

 最高人民法院の二審判決では、「B社の行為は違約になるが、根本的違約ではない」と認定し、一審法院が一部法律の適用に錯誤があり、責任の認定が正しくないため、B社がA社に支払う賠償金額を訂正した。

 

争点】

1.本件はウィーン売買条約を適用すべきか否か。

2.B社の行為は根本的違約に該当するか否か。

【判決意見】

. 本件はウィーン売買条約を適用すべきである。本件の双方当事者は契約において当時米国ニューヨーク州の有効な法律に基づいて締約・管轄・解釈すると約定したが、当該約定は法律に背いていないため、有効であると認定すべきである。本件当事者の営業住所であるシンガポールとドイツはウィーン売買条約の締約国であり、米国も条約の締約国であり、かつ、一審の審理において双方当事者が自らの権利義務を確定する依拠としてウィーン売買条約を選択し、ウィーン売買条約の適用を排除しなかったため、一審法院がウィーン売買条約を適用して本件を審理することは妥当である。一方、ウィーン売買条約に定めのない問題については、当事者が選択した米国ニューヨーク州の法律を適用すべきである。

. 双方当事者が売買契約において定めたコークスの典型的なHGI値は3646であるが、B社は、実際にA社に交付したコークスのHGI値が32であり、双方の約定した典型的なHGI値より低いので、契約に合致していない。よって、B社は契約違反である。根本的違約になるか否かについて、まず、双方当事者が契約において定めたコークスの合致すべき化学と物理の特性規格の内容から見れば、契約にはコークスの湿気・硫黄・HGI値等7つの指数について規定はあるが、HGI値のみが契約の定めに合致しなかった。また、双方の証言によると、HGI値が32のコークスは依然として使用できるが、ただ用途が限定される。そこで、本件コークスのHGI値は契約の定めに合致しなかったが、使用価値があると認定できる。次に、A社が本件コークスを「市場合理価格より低くない」価格で転売した事実によれば、本件コークスが合理的な価格で販売できると示した。そして、ウィーン売買条約における根本的違約についての他国の裁判所の解釈を総合的に考慮すると、買主に不合理な負担をかけない限り、物品が使用できまたは転売でき、さらに多少値引きされた場合には、品質が契約に合致しないことは、非根本的違約に過ぎない。したがって、HGI値が32のコークスを交付したB社の行為は、根本的違約にならない。

 

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