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執行管轄権の確定および執行申立期間の起算時点

5分で分かる判例~

 

12回 渉外仲裁判断に関する

執行管轄権の確定および執行申立期間の起算時点

 

 

中国の人民法院(裁判所)が渉外仲裁判断に関する執行管轄権を有するか否かについてどのように判断するか。人民法院に強制執行を申し立てる期間はいつから起算すべきか。

今回紹介する上海市高級人民法院の二審裁定の判旨は、次の通りである。すなわち、当事者が中国の人民法院に対し法的効力の生じた渉外仲裁判断の執行を申し立てる場合、被申立人またはその財産が中国国内に存在すれば、人民法院は当該案件に対し執行管轄権を有する。当事者が人民法院に対し強制執行を申し立てる期間は、被申立人またはその財産が中国国内に存在することを発見した時点から起算する。

 

【事実関係】

中国国際経済貿易仲裁委員会は、上海A公司とスイスb公司の売買契約紛争に対し、2006918日に仲裁判断を下した。2007827日、A公司はスイスC裁判所に対し当該仲裁判断の承認と執行を申し立てた。C裁判所は、A公司の提出した仲裁判断書の翻訳文が厳格的に「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(以下、「ニューヨーク条約」という)第4条第2項の規定(すなわち、翻訳文は、公設の若しくは宣誓した翻訳者又は外交官若しくは領事官による認証を受けたものである。)を満たしていないことを理由に、その申立を却下した。

2008730日、A公司は、上海市浦東新区にて展示されているb公司の機械設備を発見し、上海市第一中級人民法院(以下、「上海一中院」という)に対し執行を申し立てた。当日、上海一中院はそれを立件して、b公司の展示中の機械設備を差し押さえた。b公司は、A公司の申立が「中華人民共和国民事訴訟法」(以下、「民事訴訟法」という)に規定されている期限を超えたことを理由に異議を申し立てて、上海一中院に対し当該案件の不受理、差押の解除及び執行の停止を要求した。

上海一中院は、20081117日、(2008一中執字第640-1号民事裁定を下し、B公司の異議申立を却下した。裁定書が送達された後、B公司は上海市高級人民法院に上訴した。

 

【判決】

上海市高級人民法院は、20111220日、(2009高執複議字第2号執行裁定を下しB公司の上訴を却下した。

 

争点】

1.中国の人民法院はこの案件に対し、執行管轄権を有するか否か。

2.執行を申し立てる期間はいつから起算すべきか。

 

【判決意見】

1.民事訴訟法の規定によれば、中国の渉外仲裁機関が下した仲裁判断について、被申立人もしくはその財産が中華人民共和国国内に存在しない場合、当事者は管轄権のある外国の裁判所に対し承認および執行を申し立てなければならない。本件の場合、仲裁判断の効力が生じた当時、被申立人B公司もその財産も中国国内に存在しなかったため、人民法院は当該仲裁判断に対して執行管轄権を有しなかった。2008730日、A公司は被申立人B公司の財産が上海市で展示されていることを発見した。「当事者の一方が仲裁判断を履行しない場合には、相手方当事者は、被申立人の住所地または財産所在地の中級人民法院に執行を申し立てることができる」といった民事訴訟法の規定並びに、被申立人B公司が仲裁判断に付与された義務を履行しない事実及びその財産が中国国内にある事実に基づき、上海一中院は当該執行申立に対し管轄権を有する。なお、ニューヨーク条約により確定されている原則とは、仲裁判断がニューヨーク条約に規定する基本条件を満たされば、各締約国にて承認され、執行されることが認められ、かつ、当事者が複数の締約国に仲裁判断の承認および執行を申し立てることが禁じられていない。被申立人は、執行地の裁判所に債務完済の証拠を提出すれば、既に仲裁判断に与えられた義務を履行したことを立証して抗弁することができる。したがって、本件に対する人民法院の執行管轄権の行使は、ニューヨーク条約の趣旨に合致しており、被申立人が効力の生じた仲裁判断を繰り返して履行することも避けられる。

2.民事訴訟法(2007年改正)第215条の規定によると、「執行を申し立てる期間は、2年とする。……前項に定める期間は、法律文書が定める履行期間の最終の日から起算する。法律文書が分割した履行期間を定めている場合には、所定の各履行期間の最終の日から起算する。法律文書が履行期間を定めていない場合は、法律文書の効力発生日から起算する」。中国の法律に定められている執行の申立期間の起算は、効力発生の法律文書が作成された時、被申立人もしくはその財産が中国国内に存在する場合に関する一般的な規定である。本件の場合は、仲裁判断の効力が生じた時に、被申立人もその財産も中国国内に存在しなかったため、人民法院は本件に対し執行管轄権を有しなかった。申立人A公司は、主観的に権利を行使したくないまたは権利の行使を怠ったわけではなく、客観的に当該紛争と人民法院との接点が生じなかったため、人民法院に対し執行を申し立てることができなかった。申立人は中国国内にある被申立人の財産を発見した後、直ちに人民法院に執行を申し立てた。人民法院は、強制執行の申立を受理した後、当該申立が法律規定の期限内に提出されたか否かを審査しなければならない。執行管轄権を有することは、人民法院が執行申立を審査する必要な前提である、したがって、執行管轄が確定された日から、すなわち、被申立人の執行に供する財産が発見された日から、執行申立の期間を起算すべきである。

 

DLからの一言】

1. 本判例は、渉外仲裁判断の効力が生じた時、被申立人若しくはその財産が中国国内に存在しなかったが、その後中国国内に被申立人の財産を発見した場合に、人民法院が執行管轄権を有することを明らかにした。これは、渉外仲裁判断の執行にとって重要な意義がある。ニューヨーク条約は、当事者が多数の締約国に仲裁判断の承認および執行を申し立てることを禁じていない。よって、たとえ外国の裁判所に強制執行を申し立てたとしても、中国国内に被申立人の財産(例えば、中国国内で展示されている展示品、中国領域に入った船舶または飛行機等、中国国内で持っている登録商標の専用権等の知的財産権、持っている中国国内の会社の株式等)も発見すれば、かかる債務が完済されていない限り、中国の人民法院に強制執行を申し立てることができる。本件の結果は、執行のコストダウン、執行期間の短縮または執行成功率の向上に有利である。

2.執行申立期間の起算時点について、本判例は指導的な判断基準を示した。すなわち、執行管轄が確定された日(被申立人の執行に供する財産が発見された日)から計算する。これは、本件の特殊的な事情から導いてきた合理的な判断である。外国の被申立人若しくはその財産がまたいつ中国国内に入るかが非常に不確実なため、執行管轄の確定された日を執行申立期間の起算時点とすることは、申立人の合法的な権益を公平に保護することに資する。

 

注:本判例は20157月第225期公報における最高裁の公布した指導判例より

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