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 契約違反による損失の立証責任

毎月最高裁が発行する「公報」には、指導性判例や典型判例等が掲載されています。

DLでは、その中の判例を毎月12件選んでご紹介致します。

 

 

5分で分かる判例~

 

9回 契約違反による損失の立証責任

 

 

民商事契約の履行中、一方の当事者による契約への違反がよく起こる。その場合、契約を遵守する側は損害賠償を求めること、すなわち、当該契約違反により受けた損失の賠償を違約側に対し請求することができる。今回紹介する判決に関わる紛争では、顧客は旅行業者の海外ツアーを申し込んでおり、出発の約1ヶ月前に自らの事情で当該ツアーのキャンセルを申請したが、旅行会社はその損失の賠償として約半分の旅費を控除した。顧客はその損失を認めておらず、旅行業者を裁判所に訴った。20141219日、上海市第一中級人民法院は、旅行業者がその主張する損失について十分立証しなかったことを理由に、顧客が契約に約定された違約金のみを負担し、旅行業者が残りの旅費を全額払い戻すといった終審判決を下した。

上海市第一中級人民法院の二審判決の判旨は、次の通りである。すなわち、旅行業者は、顧客の一方的な契約解除が契約違反であり、契約の約定に基づき実際の損失を負担すべきと主張する場合、証拠を挙げて「損失が実際に発生したこと」および「損失の合理性」を証明しなければならない。立証が不十分な場合、旅行業者が不利の結果を負う。また、旅行業者から人民法院に挙げられた証拠が中華人民共和国の領域外で形成されたものの場合、当該証拠は、法により公証および認証の手続を済ませなければならず、香港特区、マカオ特区又は台湾地区で形成された証拠は、関連の証明手続を済ませなければならない。

 

【事実関係】

顧客(一審原告、二審上訴人)は、ツアー契約を締結して旅費を全額支払った後、事情によりビザ手続を済ませることができず、予定のツアーに参加することができなくなったため、旅行業者に対し、当該ツアーのキャンセルおよび旅費の払い戻しを要求した。

旅行業者(一審被告、二審被上訴人)は、契約の解除に同意したが、契約の約定通りに旅費総額5%相当の違約金を控除するほか、予め現地の接待会社である欧洲之星に支払った3018ユーロのホテル代が欧洲之星のキャンセル・ルールにより払い戻さないこと、また、当該ホテル代、ビザ取得費用および保険料等実際に発生した損失が顧客の支払った旅費から控除することを表明した。旅行業者は、上記の費用を控除した後、残りの旅費を顧客に払い戻した。

控除された費用の損失について、顧客はそれを認めなかった。旅行業者との協議で紛争解決ができなかったため、顧客は上海市長寧区人民法院に訴訟を提起し、契約に約定された違約金を除いた部分の旅費の払い戻しを要求した。

旅行業者は、3018ユーロのホテル予約代が確実に発生したことを証明するため、欧洲之星が発行した「費用受取証明書」および「キャンセル・ルール」等の証拠を挙げた。また、欧洲之星の発行した証拠について、訴訟コストを考慮して公証および認証の手続を行わなかったことを表明した。

一審の裁判所は、次のような判決を下した。すなわち、顧客側が契約違反であり、旅費総額5%相当の違約金を支払うべきである。また、ホテル代の損失は事実であるが、海外の会社である欧洲之星の発行した書面が法により公証および認証の手続を行わなかったため、かかる証拠に瑕疵がある。しかし、今回の紛争が顧客の契約解除に起因し、かつ、旅行業者から挙げられた証拠が提供者の協力拒否により瑕疵を取り除くことができないことに鑑み、ホテル代の損失は双方が折半負担する。

顧客は、一審判決に不服し、上海市第一中級人民法院に上訴した。

 

【判決】

一審判決を取り消し、違約金および払い戻し済み分を控除した後の残りの旅費を顧客に払い戻すよう旅行業者に命じた。

 

争点】

旅行業者が主張した3018ユーロのホテル代の損失は、実際に発生し、かつ合理的な損失に該当するか。

 

【判決意見】

1.顧客と旅行業者との間で締結されたツアー契約は合法かつ有効である。顧客がその自身の原因によりツアーをキャンセルしたのは、契約違反に該当し、契約の約定により、旅費総額5%相当の違約金を負担しなければならない。

2.当該ツアー契約では、旅行業者がすでに行ったパスポート手続の費用、ホテル予約の費用、ビザ申請の費用、国際および国内の交通手配の費用に関わる損失は、実費で計算すると規定している。旅行業者が、顧客のキャンセルにより実際の損失が生じたと主張する場合、「損失が実際に発生したこと」および「損失の合理性」に関わる立証責任は旅行業者にある。立証が不十分な場合、旅行業者が不利の結果を負う。

3.旅行業者が挙げた証拠を総合的に検証すると、証拠の効力および証明力でも、直接証拠と間接証拠の裏付けでも、説得力のある証拠になっていない。旅行業者がホテル代の損失を証明するために挙げた「費用受取証明書」および「キャンセル・ルール」等の領域外証拠は、公証および認証の手続を済ませておらず、かつ、一部の証拠に訳文がないため、形式上明らかに瑕疵がある。欧洲之星との間の往来メールおよび届出書類の真実性を認定することは困難であり、損失が実際に発生しかつ合理的であることを裏付けることはできない。また、ビザ取得費用および保険代についても、旅行業者はかかる支払証拠を挙げなかった。裁判所は、二審期間中、再び旅行業者に1ヶ月の立証期間を与えて関連証拠を補足させたが、旅行業者は、一歩進んた有効な立証ができなかった。

4.よって、旅行業者は、顧客のキャンセルにより実際に損失が発生したと主張したが、「損失が実際に発生したこと」および「損失の合理性」について立証責任を十分に果たさなかったため、裁判所は、旅行業者の当該主張を支持せず、違約金および払い戻し済み分を控除した後の残りの旅費を顧客に払い戻すよう命じる。

 

 

 

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