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「ギャンブル契約」―誰と締結すれば、有効になるか

毎月最高裁が発行する「公報」には、指導性判例や典型判例等が掲載されています。

DLでは、その中の判例を毎月12件選んでご紹介致します。

 

5分で分かる判例~

第3回 「ギャンブル契約」―誰と締結すれば、有効になるか?

 

「ギャンブル契約」は、バリュエーション調整メカニズム(Valuation  Adjustment MechanismVAM)と通称されており、国内外でのプライベートエクイティ(PE) 投資時によく使われている。その中に、目標業績未達成時の補償条項(以下、「ギャンブル条項」という)は、頻繁的に利用されている。「ギャンブル条項」は、投資時の情報の非対称性から、実務において一般的に利用され、投資者の利益を保護するための重要な条項であるにもかかわらず、我が国の法律はこれに対する専門的な法規規定がなく、その法的効力は長期的に曖昧な状態になっている。

2012117日、最高裁判所は「中国ギャンブル契約訴訟第1号」といわれる海富投資が甘粛世恒、香港迪亜等に対する増資紛争訴訟案について、終審判決を下した。その判決文は、20148月第214期公報に掲載された。最高裁判所は、本案件に対する判決によって、「ギャンブル条項は、目標会社及びその債権者の利益を侵害してはならないが、目標会社の株主と締結した場合は有効である。即ち、株主、と賭けることができ、目標企業と賭けてはならない」という基本原則を確立し、公衆利益の保護、取引促進、意思自治の尊重という立場を示した。本案件の判決結果及び確立された基本原則は、外国企業が中国国内企業への投資又は買収時の利益保護条項の設計にも大きな参考意義がある。

 

【背景】

2007111日、蘇州工業園区海富投資有限公司(以下、「海富投資」という)と甘粛世恒有色資源再利用有限公司(契約締結時の社名は「甘粛衆星鋅業有限公司」であったので、以下、「甘粛世恒」という)、香港迪亜有限公司(以下、「香港迪亜」という)、陸波(香港迪亜の総経理、法定代表者)が共同で「甘粛衆星鋅業有限公司増資協議書」(以下、「増資協議」という)を締結し、甘粛世恒の登録資本金は384万ドルであり、香港迪亜が投資の100%を占めており、各方は、海富投資が人民元2000万元で甘粛世恒に増資し、甘粛世恒増資後の登録資本金の3.85%を占め、香港迪亜が96.15%を占めること(即ち、2000万元の内に、114.7717万元が増資する登録資本金であり、残りの1885.2283万元が資本積立金に計上する)を約定した。

「増資協議」の中に「ギャンブル条項」が含まれており、その主な内容は以下の通りである。「増資協議」第七条第(二)項の「業績に関する評価調整条項」では、「甘粛世恒の2008年度の純利益が3000万元を下回る場合、海富投資は甘粛世恒に補償を求める権利を有し、甘粛世恒が補償義務を履行しない場合、海富投資は原株主である香港迪亜に補償義務を履行するよう求める権利を有する。補償金額=(12008年純利益/3000万元)×今回の投資金額」と定めている。

また、工商年間検査報告書の記載によると、甘粛世恒の2008年度に実現した生産経営利益総額は26858.13元、純利益は26858.13元であるため、約定した水準に達せずに、「増資協議」における「ギャンブル条項」の条件が成就した。

200912月、海富投資は、蘭州市中級人民裁判所に訴訟を提起し、甘粛世恒、香港迪亜、陸波に協議補償金1998.2095万元の支払い、本案件の訴訟費用及びその他費用を負担することを求めた。

 

【判決】

1、一審裁判所は、「ギャンブル条項」が「中華人民共和国中外合資経営企業法」第八条の企業の純利益が合弁当事者の登録資本金における出資比率に応じなければならないという強行規定に違反しているため、当該約定を無効なものとし、海富投資のすべての訴訟請求を却下した。

2、二審裁判所は、「ギャンブル条項」が目標企業の収益能力を要求したものであって、利益分配事項に関わるものではなく、債権者の利益を損っておなず、当該約定は法律法規の強行規定に違反していないとしながらも、投資領域におけるリスクの共同分担原則に違反し、「共同経営の名義を利用して金銭の貸借を行う行為」に該当するため、当該約定を無効とし、一審の判決を取り消し、甘粛世恒、香港迪亜が共同で海富投資に投資した資本金以外の貸付金部分の元本1885.2283万元及びその期間の利息を返還するという判決を下した。

3、最高裁判所は、「ギャンブル条項」は、「共同経営の名義を利用して貸借を行う行為」ではなく、甘粛世恒による海富投資への補償承諾が甘粛世恒及びその債権者の利益を損なうため、当該約定を無効なものとし、香港迪亜による海富投資への補償承諾が甘粛世恒及びその債権者の利益を損なわず、また、法律法規の禁止性規定にも違反していないため、当事者の真実の意思表示として、当該約定を有効なものとし、二審判決を取り消し、香港迪亜が単独で海富投資に協議補償金1998.2095万元を支払うという判決を下した。

 

【争点】

1、「ギャンブル条項」はどんな性質の約定なのか?

2、「ギャンブル条項」は法的効力を備えるか?

 

【判決意見】

一審、二審の裁判所及び最高裁判所による「ギャンブル条項」の性質及び有効性に対する認定について、下記の表をご参照ください。

 

 

一審裁判所

二審裁判所

最高裁判所再審

「ギャンブル条項」の性質

1)当該条項は企業の純利益にかかわり、合資経営企業の純利益分配に関する約定である。

2)当該条項は、「会社定款」の関連条項と一致せずに、会社と債権者の利益を損なう。

1)当該条項は、目標企業の収益能力に対する要求だけであり、具体的な分配事項に関わらない。

2)約定した利益が実現する場合、甘粛世恒及びその株主は、「会社法」、「合資経営契約」等の規定に基づいて各自の利益を獲得することができ、債権者の利益を損なわない。

3)当該条項は、投資領域におけるリスクの共同分担原則に違反し、甘粛世恒の経営業績を問わず、投資者である海富投資が如何なるリスクも負わずに約定の収益を取得させる。従って、海富投資が投資した登録資本金に計上された114.7717万元を除き、残りの1885.2283万元は投資の名義を利用して貸借を行う行為である。

1)当該条項の投資される目標企業とかかわる部分は、投資して固定収益を獲得することであるため、経営実績を離脱し、会社と債権者の利益を損なう。

2当該条項の株主とかかわる部分は、会社と債権者の利益を損なわない。

3)一部分の資金を登録資本金に計上し、一部分の資金を資本積立金に計上する方法は、投資の名義を利用して貸借を行う行為ではない。

「ギャンブル条項」の有効性

当該条項における甘粛世恒の海富投資への補償責任に関する約定は法律法規の強行規定に違反しているため、無効である。

当該条項は、「共同経営の名義を利用して貸借を行う」行為であるため、法律法規の強行規定に違反しているため、無効である。

1)当該条項の投資される目標企業とかかわる部分、会社との「ギャンブル条項」は会社と債権者の利益を損なうため、無効である。

2当該条項の株主とかかわる部分は、会社と債権者の利益を損なわないため、有効である。

法律根拠

「中華人民共和国中外合資経営企業法」第八条

「中華人民共和国会社法」第二十条第一項

「中華人民共和国契約法」第五十二条(五)項

「最高裁判所による共同経営契約に関わる紛争案件の審理に関する若干問題の回答」第四条第二項

「中華人民共和国契約法」第五十二条(五)項

「中華人民共和国契約法」第六十条

 注:本判例は20148月第214期公報により

 

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